Hさんの場合

Hさんの場合

Hさんは、准看護師の資格しか持っていません。准看護師で66歳です。ほかのステーションなら働けていたかどうかわかりません、と言います。資格の種類や年齢よりも、経験や経験による知恵を、今のステーションの経営者が重視してくれたから、働けたと言えるでしょう。
現状では、訪問看護の仕事は看護師でも准看護師でも、やっていることは同じです。その差は、給与の違いだけです。体力的なハンデは、健康であれば乗り越えられます。経験が必ず生きるので、人間力が重要と言えます。
ターミナルケアの患者さんで、印象に残っている方がいらっしゃるそうです。その患者さんはご高齢で腎臓の機能が衰えて、命をつなげるには人工透析しかないという状況だったそうです。ご本人は、人工透析はせず、残りの日々は自宅で過ごしたいと希望されました。在宅看護になってからは、腎臓機能は衰えていき、全身に発疹が広がりました。お風呂のあとには、軟膏を塗らなくてはなりません。その患者さん宅は、看護に行くと、いつも誰かが、そばについていたそうです。奥様だったり、娘さんだったり、お孫さんだったり、いろいろです。それぞれが、できる限りで看護をし、在宅介護において理想的と言える状態でした。しかし、だんだんと病状は悪化して、最期は全身の機能が落ちて息を引き取られました。
十数人の、ご家族全員と見られる方たちに、看取られたのですが、誰も取り乱しませんでした。おじいちゃん、大変だったね、つらかったねと、穏やかに声をかけていたそうです。死亡処置をするために、お清めをさせていただきますと伝えると、皆さんが私たちにもさせてください、と言います。涙はあるのですが、ご家族は患者さんとの思い出を静かに語り合っていました。患者さんに対して、やるべきことはやった、思い残すことはない、そんな穏やかな看取りでした。
そんな中、患者さんの小学校1年生になるお孫さんが絵をくれて、「これは看護師さん。私、大きくなったら看護師さんになるの」と言いました。この仕事をしていて良かったと本当に思ったそうです。

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