療養型病床における看護師の仕事

療養型病床とは、医療処置が必要な比較的安定している患者が入院する病床でした。看護配置が20対1(患者20名に対して看護師1人)など、看護師の定数が少ないことが特徴でした。しかし、社会的入院であることから問題視されていました。そこで、2017年に療養病床制度が大きく変わりました。
I型:介護療養病床に相当:看護スタッフによる喀痰吸引や経管栄養などの医療行為が頻繁に予想される病床で、24時間の看取り、ターミナルケアにも対応した施設です。看護師の配置は、6対1(医師は48対1)。
II型:介護老人保健施設に相当:老健は三か月ごとに入退所の判定を実施することです。I型よりは、比較的医療・介護の状態が安定している患者を受け入れる施設です。看護師の配置は、介護職員と合わせてよく、3対1(医師は100対1常勤1名以上)。
医療外付け型:医療機関プラス有料老人ホームという新しいタイプの介護サービスです。
療養型病床での看護師の役割は、他の医療職また、福祉介護職とのチームワークが求められます。入所した人が安全に生活できるように、医療の専門職として患者の健康状態を観察し生活を守ることです。医療処置や全身状態の観察、合併症の予防や急変時の対応、病棟の感染対策や「ターミナルケア」と呼ばれる看取りの看護、リハビリテーションなど、医療の専門職として期待される役割は幅広いものです。患者の高齢化・医療の高度化が進むなかで、看護師の的確な判断と生活者としての視点が求められる場です。

緩和ケア病棟における看護師の仕事

「緩和ケア」とは、終末期に行われるケアで、「治癒を目指した治療が有効でなくなった患者に対するケア」と思われがちですが、WHOが2002年に「生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対するケア」であると定義しました。これにより、終末期に限らず早期からがんに対する治療として緩和ケアを並行して行われるようになりました。基本的な考え方は、生活やその人らしさを大切にすることによって、身体や心のつらさを和らげるという考え方です。がんによる痛みや吐き気、不眠、だるさを理由に緩和ケアに入院する患者が多数だそうです。
緩和ケア病棟の看護師は、医師、薬剤師、栄養士、ボランテイアスタッフと協働しながら、これらの患者や家族の苦痛な症状を和らげるケアを提供しています。病気や症状など身体の問題だけではなく、心理社会的問題、メンタルな問題にも目を向けることが大切ではないでしょうか。看護師は、患者や家族とのいままでの会話様子や内容を他のスタッフと共有し、必要なケアの調整を図り、その患者が安心できるようサポートしていきます。
入院中の患者の生活環境の整備も、看護師の大きな役割になります。定期的に音楽会やお茶会を聞いたり、季節に応じた絵や写真、行事にかかわる交差鵜物花を飾ったり、患者だけでなく家族も一緒にリラックスした時間が過ごせるような環境づくりを行なっています。

Tさんの場合

リハビリ病院勤務の時は、患者さんを自宅に帰すことが目的と指示を受けていました。それを目標にしていましたが、一度リハビリを卒業しても、再びリピーターとなって戻ってくる患者さんが多いことに気づいたそうです。そして外来に来た患者さんたちは、あまりいい顔をしていません。患者さんを自宅へ、と導いても、現実において、自宅で患者さんたちはどんな暮らしをしているのかが、気になったと言います。
たとえば、自宅に戻りたいと言っていた患者さんが、やっと自宅に帰れた後、最初の外来で表情が暗いことがあります。何故かと聞くと、家では何もできないと訴えます。何かをしようとしても、危ないから寝てろ、座ってろと言われるそうなのです。家族も慣れていませんから、慎重になるのもわかります。このような患者さんのケースは多くあります。作業療法士は、生活の中に、どのようにしてリハビリを落とし込むかを、常に考えています。病院でのリハビリでは、現実の生活面でのフォローはできません。そんなことから、在宅でリハビリを担当するほうがやりがいがあるのではないか、と考えて訪問療法士の世界に入ったそうです。
訪問看護の中でリハビリを始めると、さまざまな患者さんがいて、家族がいて、生活環境があることを実感したそうです。病院や施設でのリハビリ効果が、実際の生活の中では、生きないこともあるということにも気がつきました。それぞれの状況に応じて、患者さんのリハビリのプログラムを考えて、実践することが大切です。そうしなければ、在宅生活をできるだけ継続する、ということができません。患者さんに少しでも充実した生活を送って欲しいから、生活の中でリハビリをするのです。これがリハビリの本当の目的です。そしてそれが可能なのは、在宅看護だと実感したそうです。

Kさんの場合

Kさんは、親族に看護師が何人かいて、その影響が大きかったと言います。お母様も、手に職をつけたほうがいいと勧めてくれて、自然な流れで看護師になったそうです。
脳外科専門に臨床を10年、その後、救急外来に2年勤務しました。そして、子供がまだ小さかったので、訪問看護師は時間の融通が利くし、子育てと両立をしやすいということで訪問看護師になったそうです。
現実として、病院勤務に比べて訪問看護師は、時間の融通がつきやすいと言います。病院には夜勤があるし、シフトが決まっているので休めません。たとえ、休んでもいいと言われでも、他の人に迷惑がかかるので、休むことはできません。一方、訪問看護は、だいたいの場合、自分でスケジュールが決められます。オンコールが難しい場合でも、訪問看護ステーションにいつでも相談ができます。そして、やりがいがあるので、看護をしていて、とても充実感があると言います。
たくさんの患者さんがいらっしゃいますが、信頼関係が生まれるのは、嬉しいものです。訪問した時に来てくれたんだと、喜ばれることもあります。現在は管理者をしているので、以前より訪問はできなくなったそうですが、たまに時間が空いたときなどに患者さん宅に伺うと、すごく嬉しそうにしていただけて、感動するそうです。
患者さんやご家族は、話を聞いてもらいたいという気持ちを持っています。共感したい、理解したい、という気持ちが訪問看護師には必要とされると言います。それが訪問看護の基本の一つとも言えるでしょう。

Rさんの場合

看護師は、子供の頃からの夢だったそうです。病院の匂いが好きで、お母様も准看護師の資格を持っていました。短大を卒業して、大学病院で働いた後、一度、看護師の仕事を辞めて、結婚をしてから訪問看護の世界に入ったそうです。
Rさんは結婚をしていたので、家事との両立をしたいと思い、週4回、9時から15時までというパートで働き始めました。最初は10人くらいの患者さんを担当しました。やはり訪問看護は病院勤務とは違うと思ったそうです。最初に働いていた病院も、プライマリ・ナーシング(一人の患者を、一人の看護師が一貫して担当すること)という制度はありました。ですが、それは自分が出勤した時だけに限られます。他の日は、別の看護師さんが、その担当患者さんを看ています。自分自身も、担当患者さん以外の患者さんを看なければなりません。なので、完全な1対1看護は病院ではできません。それに対して、訪問看護では、一人の患者さんを、毎回1時間近くしっかりと看護することができます。じっくりと関われることで、関係性も持続できます。理想的な看護師の動きであると思ったそうです。病院勤務は忙しかったけれど、訪問看護ほどの充実感は得られなかったと言います。訪問看護師を始めて、これが、看護の精神であり、ナイチンゲールそのものだと実感したそうです。
患者さんは訪問看護師を、ちゃんと見ています。看護の仕方の他に、仕草や言動、表情一つでも見逃すことはありません。自分の担当の看護師が信頼に足るか否かが気になるのは、当たり前のことです。ですから、訪問看護師は患者さんの前で格好をつけたりせず、ただ一生懸命であることがとても重要だと感じるそうです。

Hさんの場合

Hさんは、准看護師の資格しか持っていません。准看護師で66歳です。ほかのステーションなら働けていたかどうかわかりません、と言います。資格の種類や年齢よりも、経験や経験による知恵を、今のステーションの経営者が重視してくれたから、働けたと言えるでしょう。
現状では、訪問看護の仕事は看護師でも准看護師でも、やっていることは同じです。その差は、給与の違いだけです。体力的なハンデは、健康であれば乗り越えられます。経験が必ず生きるので、人間力が重要と言えます。
ターミナルケアの患者さんで、印象に残っている方がいらっしゃるそうです。その患者さんはご高齢で腎臓の機能が衰えて、命をつなげるには人工透析しかないという状況だったそうです。ご本人は、人工透析はせず、残りの日々は自宅で過ごしたいと希望されました。在宅看護になってからは、腎臓機能は衰えていき、全身に発疹が広がりました。お風呂のあとには、軟膏を塗らなくてはなりません。その患者さん宅は、看護に行くと、いつも誰かが、そばについていたそうです。奥様だったり、娘さんだったり、お孫さんだったり、いろいろです。それぞれが、できる限りで看護をし、在宅介護において理想的と言える状態でした。しかし、だんだんと病状は悪化して、最期は全身の機能が落ちて息を引き取られました。
十数人の、ご家族全員と見られる方たちに、看取られたのですが、誰も取り乱しませんでした。おじいちゃん、大変だったね、つらかったねと、穏やかに声をかけていたそうです。死亡処置をするために、お清めをさせていただきますと伝えると、皆さんが私たちにもさせてください、と言います。涙はあるのですが、ご家族は患者さんとの思い出を静かに語り合っていました。患者さんに対して、やるべきことはやった、思い残すことはない、そんな穏やかな看取りでした。
そんな中、患者さんの小学校1年生になるお孫さんが絵をくれて、「これは看護師さん。私、大きくなったら看護師さんになるの」と言いました。この仕事をしていて良かったと本当に思ったそうです。

Yさんの場合

訪問看護師のYさんは、乳幼児から小児、20歳くらいまでの子供たちを担当しています。在宅看護師になってから20年近くが経っています。在宅で小児を受け持つ看護師はあまり多くはありません。それは患者の数が少ないからです。
小児が訪問看護をするケースは難病であることが多いと言えます。そのケースでは法律で医療費が無料になる場合が多く見られます。ただ、母親が子供に付きっ切りになってしまい、働けない場合もあります。母子家庭の場合は生活保護を受けていることもあるでしょう。しかし、医療費は無料でも交通費は掛かってしまいます。ステーションによっては、交通費をステーションが負担することもあります。
患者さんやその家族と向き合う時間が、訪問看護師の場合は長いです。そのため、気づくことも多くあります。病院のように大きな組織ではないので、早く問題を解決することもできます。その結果が、いい看護につながっているのです。それは訪問看護の喜びと言えるでしょう。
小児の訪問看護では、患者さんである子供にとって、お母さんは一番です。母親が子供を思う気持ちもとても強く、ケースによっては訪問看護師より、病気について勉強をしていることもあります。本来は、訪問看護師のほうが、医療に対する技術や知識を多く知っていなくてはなりません。ですが、お母さんの熱意にはすごいものがあります。教えられることもあります。ですから、そんな母親よりも、たくさんの技術と知識を持っていなければ信用はしてもらえません。母親を納得させる看護をすることが重要です。日々の勉強と努力の積み重ねがとても大切だと言えるでしょう。